現代ではさまざまな経済的な影響により、物価上昇が大きな話題となっています。
特に令和の米騒動と呼ばれるお米の価格高騰は、ほとんどの家庭で日常的に食べている食材だからこそ、みなさんも気になっているのではないでしょうか。
日本において米づくりと人々の生活は切っても切り離せない関係です。令和以前にも米騒動や一揆といったお米の価格や収穫量によるさまざまな問題が起き、お米の問題は国問題として捉えられてきました。
今回はお米の歴史について紹介しながら、米騒動や備蓄米制度ができた背景について解説していきます。
お米とは
私たち日本人が毎日当たり前に食べているお米は、稲の種子に当たる部分です。
海外では小麦やとうもろこしなどの穀物が多く食べられている中、日本ではお米の栽培が最も盛んであり、主食として食べられています。
和食にはお米が欠かせないというイメージは誰もが持っているのではないでしょうか。
近年では、お米の食べ方や調理方法も多様化され、米粉を使用した創作料理や一般的な米料理であるおにぎりも「おにぎらず」や「洋風おにぎり」などアレンジした料理が普及しています。
稲作が日本に伝わって以降、現代に至るまで、お米は人々の生活と経済の中心を担ってきたといえます。古くから慣れ親しんできたからこそ、現代におけるお米の価格高騰やお米の今後に関心があるという方も多いのではないでしょうか。
日本に米づくりが根付いた歴史
日本とお米の関係性は深く、長い歴史の中でもお米は食卓で愛されてきただけではなく、富と権力を表すものでもありました。備蓄米制度ができた背景を解説するにあたって日本に米づくりが伝わった背景もご紹介します。
日本に米づくりが伝来したのは紀元前8世紀頃、縄文時代の終わりだといわれています。伝わったルートは諸説ありますが、中国から朝鮮半島を経て、九州に伝わったとされる説が有力視されています。
水田による稲作や農具、土器などが同時期に広まり、紀元前6世紀ごろ、稲作が全国的に行われるようになった時代が弥生時代です。その後、紀元前3世紀ごろの卑弥呼を女王とする邪馬台国ではすでにお米を中心とする社会が形成されていたとされています。お米の量と権力が比例する社会ではお米を巡った争いがはじまり、日本の歴史と深く結びつく農地(土地)のうばい合いを繰り返す時代につながっていったのです。

日本に伝来してから現代まで、2000年以上もの間愛されてきた「お米」。現代に生きる私たちに届くまで、通ってきた長い歴史の道のりを考えると、より一層お米の大切さを感じますね。(下村 綾香)
米づくりと政策
現代のようにお米の流通が広がっていく過程では、備蓄米制度の他にもお米に関わる法律が数多く制定されてきました。
お米の収穫量は富に直結し、お米そのものが税として納められていた時代も長くありました。歴史的にみると、現代のようにさまざまな食品が流通していなかった時代では、お米の価値は今とは比べられないほど高いものであったでしょう。
日本の歴史に残っている代表的なお米に関する法律を下記で紹介します。
飛鳥 | 班田収授の法 | 6歳以上の男女に口分田が与えられ、収穫の約3パーセントを田租として徴収した法律 |
飛鳥 | 墾田永年私財法 | 開墾した土地の永久所有を認める法律 実際には有力貴族や豪族が所有する土地が増えて行った |
平安 | 延喜の荘園整理令 | 有力者が所有していた荘園の整理によってこれまで「人」に課されていた税が「土地」に課されるようになった |
安土桃山 | 太閤検地 | ものさしやますの大きさを統一し、田畑の面積や土地を調べてその生産量を石高(お米の生産量を表す単位)で設定し、年貢を徴収するようになった |
江戸 | 新田開発 | 江戸幕府や藩は年貢の増収を図り、また、百姓は生活の向上のために新田開発を進めた |
明治 | 地租改正 | 地租を地値の3%と定め、土地の所有者に現金で納めさせた |
昭和 | 食糧管理法 | 戦時下において、お米や麦などの食糧を国管理下におく法律 |
平成 | 食糧法 | 食糧管理法に代わって制定された法律であり、制定から改正後、だれでも自由にお米を流通・販売できるようになった |
平成 | 米トレーサビリティ法 | お米や米加工品について、流通ルートを特定するために制定された法律であり、生産・販売・提供までの業者間の取引等の記録を作成・保存することが義務付けられている |

歴史を振り返ると、どの時代においてもお米は政治と経済の中心にあったことが伺えます。(下村 綾香)
お米にまつわる日本の騒動
日本ではお米にまつわるさまざまな騒動が現代までも多く起こっています。
社会情勢の影響も大きく受けていますが、その原因は主に生産量の減少とお米の価格上昇です。
中でも「米騒動」は1918年、米価の値上がりが原因でおこった全国的な民衆の暴動のことを指します。第一次世界大戦によって好景気が続いた日本では、労働者の賃金上昇に伴って物価もそれ以上に上昇していました。
その中、戦争の長期化やシベリア出兵により政府がお米を買い占めたことにより、富山にてお米の安売りを求めた民衆が米屋や精米会社を襲う騒動が起きました。これは女房連の一揆ともいわれています。その後、米騒動は全国に広がり、42都道府県で70万人が参加した大暴動へとつながったのです。
また、平成にも1993年米騒動、平成の米騒動と呼ばれる米不足が発生しています。
前年の大冷夏の影響と日照不足によって1993年の収穫量が前年の74%程度まで落ち込んだことにより、消費者のみならず業者までもがお米の買い占めに走り、店頭からお米が消える事態になりました。この事件を経て1995年から正式に国によるお米の備蓄が制度化され、備蓄米として国に保管されることとなったのです。

米騒動以前も日本ではあらゆる地域でお米に関する一揆や騒動が起こっていました。米作りやお米の価格は私たちの生活と密接に関わっているからこそ、いつの時代も国民が注目する大きな問題となっているんですね。(下村 綾香)
備蓄米制度
令和の米騒動でも話題になっている備蓄米制度は政府が凶作や不作に備えてお米を備蓄する制度のことです。10年に1度の不作や、通常程度の不作が2年連続した事態にも、国産米で耐えられるよう政府備蓄米として約100万t程度が目安に保管されています。
毎年約20万tのお米が備蓄米として購入されており、保管期間は購入から約5年です。期間が過ぎた米は飼料用米としての売却や、一部子ども食堂、こども宅食への支援として無償提供がされています。
お米の価格変動に影響を及ぼさないよう、基本的には主食米としての販売は行われていません。備蓄米制度が制定されてからこれまで、東日本大震災や熊本地震など大規模災害時に供給、及び、国産加工原材料用のお米(ふるい下米)発生量の減少時の販売などで政府備蓄米が使用されていました。
令和の米騒動では国内の米価格高騰を受けて備蓄米が販売されていますが、主食用のお米として販売されるのは初めてのことです。2025年になっても止まらないお米の価格高騰を受けて、農林水産省が放出を決定しました。

実は私自身、令和の米騒動について報道しているニュースを見て、初めて備蓄米の存在を知りました。今後の備蓄米の放出についても注目してみていきたいですね。(下村 綾香)
備蓄米制度の仕組み
備蓄米の買入れや管理費は全て国費で賄われ、現在では全国約300箇所の倉庫にて5年分のお米が保管されています。「政府備蓄米」という名前の通り、備蓄分の所有権は国が持っています。食糧法スタート時には大量の政府買入れを行っていましたが、平成10年産から備蓄運営ルールといわれる販売量が減れば買入量も減少させる仕組みを導入し在庫を適正化しました。
2011年以前は「回転備蓄」と呼ばれる毎年50万tを買い入れ、50万tを主食用として売り渡す備蓄米を回転させる方式を使用していました。ですが、政府による需要の調整が必要だったことなどから、現在では「棚上げ備蓄」が使用されています。
棚上げ備蓄は、備蓄量の100万tはそのままに、毎年20万tを収穫前契約で買い入れ、毎年20万tを主食用ではなく、飼料用米として売却する方式です。
備蓄米はなるべく市場から切り離すことで米価格への影響をなくすことも考えられていますが、お米の生産量や国の財政負担など幅広く関わる状態を考えると無関係でいることは難しいでしょう。
回転備蓄方式 |
|
棚上げ備蓄方式 |
|
(引用元:備蓄米処理年数と処理経費の拡大|農林水産省)
備蓄米の見分け方
2025年3月から備蓄米の店頭販売が開始されましたが、備蓄米は表記に記されていない状態となるため、見分けるためには知識が必要です。ただし、表記がない以上はあくまでも「備蓄米の可能性が高い米」であることは覚えておく必要があります。
まずは、米袋の表示に複数の品種や年産米が混ぜられている「ブレンド米」であることが挙げられます。農林水産省に「一刻も早く流通させたい」という考えがあるからこそ、その意図を組んだ業者が、銘柄を選別する以上に早く流通ができるブレンド米として販売される場合が多いことからブレンド米として販売されているそうです。
また、昨年収穫されたお米は「令和6年産」と記されている一方で、備蓄米は収穫された年数の記載がなく、価格も現在の高騰している米価格に対して安価であることが多いとされています。
備蓄米はまずいって本当?
新米とは異なり数年間保管されている古米であることから味を心配する声も多く上がっているでしょう。
備蓄米の保管はルールが定められており、ほとんどが玄米のかたちで倉庫に保存されています。倉庫の内部は年間を通して温度は15度以下、湿度は60%から65%に保たれているということで、農林水産省は5年間保管されたコメでもおいしく食べられるとしています。
実際に備蓄米を食べた人からは「全く味の違いがわからなかった」という声もあるため、購入後の自宅でも管理の方法を徹底することでおいしく食べられるでしょう。お米の味が気になる方は炊き方にも気を遣ってみたり、炊き込みご飯などお米に直接味付けをする方法もおすすめです。
新米とは
「新米」はお米が生産・収穫された年に精米され、包装されたお米です。12月31日まで新米と呼ばれ、12月31日を超えると「古米」と呼ばれるようになります。新米は人気が高く美味しいといわれていますが、実際に収穫されたばかりのお米は水分量が多く含まれているため、お米本来の「つや」「風味」「粘り」「香り」などどれをとっても最高の状態。
炊き上がりがふっくらとしており、お米の甘みや旨みをしっかりと感じられるでしょう。

令和の米騒動では放出された備蓄米の9割以上を落札した全国農業協同組合連合会(JA)が、取引先に対して「備蓄米」と表示しないよう要請しているそうです。お米の詳細が気になる人はまず、裏面を確認してみましょう。(下村 綾香)
令和の米騒動
令和の米騒動は、2024年夏に話題となった米不足やお米の価格高騰を指しています。
財務省の調査によると、2024年の2月から2025年のにかけてお米の小売り価格は約2倍に昇っています。2025年となった現在も価格が高騰し続けていることから、備蓄米の放出も行われ、今後の価格の動向は大きな注目を集めているでしょう。
令和の米騒動はこれまでの日本で起きていたお米の生産量不足ではなく、十分な生産量があるとされているにも関わらず価格高騰が起きていることに明確な違いがあるといわれています。その原因は諸説あるとされていますが、南海トラフ地震や台風の影響から需要の増加が起きたこと、米不足報道による不安感の増加による買い占め、減反政策などに触れられていることが多いでしょう。
今後9月から新米が収穫されることで、またお米の価格にも変動があると考えられています。

2,000円で買えていたお米が4,000円に・・・。生きていくために食費の割合が増えると直接家計の圧迫につながります。
今後のお米の価格の動きもよく見ていきたいですね。(下村 綾香)
お米と私たちの食卓
今回起きた令和の米騒動に伴って、私たちが毎日食べているお米は今後も安全安心に食べ続けることができるのか、お米の将来について不安視する声も挙がっています。
日本では現在お米の自給率は100%に近い状態です。ですが、近年ではお米の栽培においても農家の高齢化が進み、耕作放棄地が増加していることが問題となっているため、今後米の生産量が低下していくことも予想されています。
また、日本の食糧自給率は、国民の栄養摂取量を満たすために必要なカロリーを基準としたカロリーベースで38%、生産額ベースでは63%と低い水準になっています。今後の社会情勢による物価上昇や、気候変動による生産量の上下によっては食糧問題がより表面的に家計へと直結する可能性もあるでしょう。
これらの問題を今すぐに解決することは難しいかもしれません。ですが、輸入だけに頼らず、国内で生産している食品を守るためには消費者である国民が、意識的に国産商品を購入する意識も必要だと考えられます。
変化するお米の価値
現在、タイ米やベトナム産ジャポニカ米など海外のお米も輸入されていることから、日本のお米自体が貴重なものになっているといえるでしょう。
そもそも古くから日本で愛され食べられてきたお米は、日本の米農家さんの手によって手間暇をかけられてきたお米です。日本人が口の中でおかずと合わせて食べる口内調味を行う特性に合わせて、お米本来の甘みや旨み、食感が感じられるようにこだわって栽培されてきた商品も多くあります。
お米の価値が上がっている現代だからこそ、低価格のお米だから選ぶのではなく、自分自身のためにおいしいお米を選ぶのはいかがでしょうか?
体を構築する食べ物だからこそ、本当においしく健康に食べられるお米を選ぶことで、自分自身だけではなく家族の豊かな食卓を守ることにつながります。

令和の米騒動はお米だけの問題に見えて、背景には食料自給率や農家の減少などさまざまな社会問題が潜んでいます。これを機に改めて、食べ物について考えてみるのはいかがでしょうか?(下村 綾香)
おいしいお米を選ぶならあいづ米
あいづ農園の蔵出し米は米農家が栽培・収穫したお米のうち、自身や家族が消費するために保存している分を指します。かつて、米農家は出荷分と別に、家族が食べる分を用意しておき蔵に保存していたことからそう呼ばれているのだそうです。
現代でみなさんの健康を守り、「食は命」を体現するために日々多くの手間と愛情を込めて育てられたお米です。会津ではお米に適した気象条件下で米作りがしやすく、日中に太陽光をたくさん浴び、夜間は栄養を蓄えて育った会津米は、粘り気のあるもっちりとした食感で、甘み、旨みを感じやすいです。
炊きたてはもちろん、冷めてもおいしいのが会津米の特徴のひとつ。やわらかいけれど食感は一粒一粒しっかりとしていて弾力があり、食べ応えがあります。
米農家が食べているお米を一人でも多くの人に食べてもらいたい思いから、「あいづ農園」から直接みなさんのもとへ特別な蔵出し米をお届けします。
まとめ
今回はお米の歴史について紹介しながら、米騒動や備蓄米制度ができた背景について解説してきました。毎日食べるお米だからこそ、お米の価格変動に際してお米に対する興味を持っている方も多いでしょう。
価格高騰によって、現代ではお米の価値は再検討されています。お米のおいしさや魅力を改めて考えるためには良いきっかけにもなっているのではないでしょうか。あいづ農園の蔵出し米はこだわりの栽培方法で、一粒一粒の甘みや食感からも違いを感じていただける商品となっています。
おいしいお米で食卓を彩りたいと考えている人はぜひ一度試してみてください。

食べ物が自分の体を作っていることを、日頃から意識している人は少なくなっているでしょう。おいしいもの、食べたいものを選ぶことも大切ですが、自分自身や家族の健康を考えるのであれば「体にとって必要な栄養を取れること」もぜひ考えてみてください。(下村 綾香)